行幸 その二十七

 大宮は大宮で、亡き葵の上のことを思い出し、昔よりもますます華やかな光源氏の様子や威勢を見ると、亡くなった人のことがたまらなく悲しくて、涙をとどめることができず、しおしおと泣くのだった。その涙に濡れる尼衣の姿は、まったく格別の風情があった。


 こんなよい機会だったのに、夕霧のことは、光源氏は最後まで口に出さなかった。内大臣のやり方に、配慮が足りないと思い込んでいる節があるので、今更口出しするのも外聞が悪いと思って、やめたのだった。また、内大臣のほうは光源氏のそれに触れない態度に、自分から言い出しにくく、そのままになった。それがわだかまり、さすがに胸の晴れない思いなのだった。


 内大臣は、



「今夜もお邸までお送りすべきなのですが、突然で、お騒がせしてもと思って遠慮します。今日の返礼には、日を改めて参上させていただきます」



 と言うのだった。

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