行幸 その十八

 大宮は、



「それは、それは、いったいまあ、どうしたことだったのでしょう。内大臣のところでは、いろいろと、子だと名乗り出てくるものを、嫌がりもせずみんな拾い集めていられるようなのに、どういうつもりから、そんなふうに間違えてそちらへお頼りしたのでしょうね。ここ何年かの間に、あなたを親だと聞かされて、そうなったのでしょうか」



 と、言う。光源氏は、



「それにはわけがございます。くわしい事情は、いずれ内大臣も聞き及びになりましょう。いかにも身分の賤しいものたちの間などに起こりそうなごたごたしたわずらわしい話ですから、内大臣にうち明けましても、ふしだらな話のように人の口の端に上りそうなので、夕霧にも、まだ事情は何も話してありません。誰にもお漏らしなさいませんように」



 と口止めをするのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る