行幸 その十七

「内大臣もこのお話をどうしてふさわしくないと思われましょう。宮仕えというものは、帝の寵愛に望みをかけて身分の上下に関わらず、それなりの期待を抱いて出仕するのは、理想が高いというものなのです。


 一方、表向きの役職として、内侍司などの事務を扱い、整理するというようなのは、頼りなく、軽々しくつまらないように思われますが、決してそうとも限りません。ただ何事も本人の人柄で決まるのです。そう思って、宮仕えさせる気持ちに私が傾いてきましたので、本人に年齢などを尋ねましたところ、内大臣がお探しになってお引き取りになるべき人であったのがわかりました。それでどうしたらいいものか、内大臣と相談して、今後のことをはっきりさせたいのです。何か機会がなくてはお目にかかれそうもございません。早速こういう事情だったと打ち明けるような手立てを、いろいろ考えまして、裳着の腰結いのお願いに、内大臣にお便りをさし上げました。ところがこちらの御病気を口実に、気が進まないふうに辞退されました。確かに折りも悪かったのだと、お願いの件は取りやめにしておりました。お見受けするところ、幸い容態もおよろしいようでいらっしゃいますから、やはりせっかくこう思い立ちました機会にと存じます。そのように内大臣にお伝えくださいませんでしょうか」



 と言うのだった。

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