野分 その三十
薄紫色の着物に、髪がまだ背丈には届かない長さで、その先が扇を広げたようにふさふさしている。とてもほっそりして小さい体つきは、可憐でいじらしいほどだ。
「一昨年あたりは、時たま偶然にも、ちらりとお姿をお見かけしたこともあったのに、あれから年とともにまたすっかりお美しくご成長されたようだ。まして盛りのお年頃になられると、どんなに美しくおなりになることか」
と夕霧は思う。
「前に見てしまった紫の上の桜、玉鬘を山吹とすれば、この明石の姫君は藤の花とでも言おうか、丈高い木から咲きかかって、風に花房がなびいている美しさは、ちょっとこの姫君の感じだ」
と自然に思い比べている。
「こんな美しい人々を、思いのまま明け暮れ拝見していたいものよ。三人とも、自分にとって親や姉妹なのだから、当然そうすることだって許されるはずなのに、父君が事ごとに厳しい隔てを置いて近づけてくれないのが恨めしい」
などと思うと、夕霧の生真面目な心も、何かしらそぞろに落ち着かない気分になるのだった。
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