野分 その十六
うちくつろいだ女房たちの身なりは、はたしてどんなものなのだろうか、ぼんやりした明け方のほの暗さの中で、色とりどりな衣装を着けた姿は、誰がということもなく皆それぞれに風情がある。
女童を庭に下ろして、数々の虫かごに露を与えている。女童は、紫苑や撫子、紫の濃いのや薄い衵を着て、上に女郎花の汗衫などをつけた、季節に似つかわしい衣装で、四、五人ばかり連れ立っている。
あちらこちらの草むらに近づいては、色とりどりの虫かごを持って歩き回り、風に荒らされていかにも痛々しそうな撫子の枝を折り取って持っていく。その姿が霧の中にぼうっと見え隠れするのは、何とも言えない優艶な趣があった。
中宮の御殿のほうから、夕霧の立っているところに吹き寄せてくる風は、あまり匂わない紫苑の花さえ、ありったけの匂いを放っているようで、ゆかしい練香の薫りも、中宮の袖に触れた移り香ではないかと、想像するのさえすばらしく、心が引き締まってくるような感じがして、中宮の御前に出てゆくのもためらわれるのだった。
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