野分 その十五
「それはそうと、昨夜のあのひどく恐ろしかった嵐に、中宮の御殿にはしっかりした宮司などがお仕えしていただろうか」
といい、この夕霧を使いとして、中宮に見舞いの手紙をさし上げた。
「昨夜の風の音をどんな気持ちでお聞きになりましたでしょう。風が大荒れの最中に、私もあいにく風をひきこんでしまいまして、大変なひどい目にあっております。ただ今は静養している次第でして」
と言う。
夕霧は光源氏の前を下がって、中の廊下の戸口を通り、中宮の御殿のほうへ参上した。黎明のほの明かりの中に浮かび上がった夕霧の姿はほんとうにすばらしく、いかにも優美であった。
東の対の南側に立って中宮の寝殿のほうを見ると、格子を二間ほどあげて、ほの明るい朝ぼらけの中に御簾も巻き上げ、女房たちが座っている。高欄に寄り掛かって、年若な女房たちばかりが大勢いるのが見えるのだった。
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