野分 その十七

 夕霧が、そっと挨拶の咳払いをして、歩を進めると、女房たちはあからさまに驚いた顔は見せなかったが、皆、奥の部屋に消えていった。


 中宮が入内したころなどは、夕霧はまだ童形だったので、御簾の中にまで立ち入って、なじんでいた。そのせいで女房たちも、そうよそよそしい態度は見せない。


 光源氏の挨拶を人伝に中宮に伝えるように言い、御簾の内に顔見知りの宰相の君や、内侍などの女房がいる気配がしたので、その女房たちとしばらく小声で内緒話をする。


 やはり何と言っても、この御殿はまたそれなりに、この上もなく気品高く日々を暮らしている様子だった。それを見るにつけても夕霧は、何かと思い出すことも多いのだった。

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