野分 その八

 三条の宮邸に向かう道すがら、風は揉みに揉んで激しく吹き荒れたが、夕霧はそれにもかまわずお見舞いをした。もともと夕霧は、何ごとにも几帳面できちんとする性格なので、三条の宮邸と六条の院に参上して、光源氏と大宮にお目にかからない日はなかった。


 宮中の物忌みなどで、やむを得ず宿直をする日を除いて、忙しい政務や節会などで時間をとられ、どんな多忙な折と重なっても、まず六条の院に参上し、それから三条の宮に参って、そちらから宮中に出かけるのだった。まして今日は、こうした悪天候のため、速く吹く風よりも先に立って心も上の空にあちこちをお見舞いして訪ね、さまよい歩いているのも、いかにも殊勝げに見える。


 大宮は、夕霧が来ることがほんとうにうれしく、頼もしく思って待ち受けていた。



「この年になるまで、こんなひどい野分にはまだ一度もあいませんでしたよ」



 と大宮は震えに震えていた。庭の大きな木の枝などが風に折れる音がとても怖いのだ。

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