常夏 その二十三
内大臣は、北の対に引き取ったあの深山の近江の姫君のことを、
「どうしたらよいものだろう。余計なおせっかいをして、迎えに行って連れてきておいて、他人がこういろいろ悪口を言うからといって、今更送り返すのも、いかにも軽率で、馬鹿げだ狂態と思われるだろう。しかしこうして邸の中に押し込めておくだけでは、本気で大切に面倒を見る気があるのかと、世間が噂していると聞くのもいまいましい。弘徽殿の女御のお側などに宮仕えさせて、それなりの道化として笑いものにしてしまおうか。女房たちがひどく不器量だと悪口を言っているようだが、しかし器量は言われるほど、みっともなくはあるまい」
などと、考えて、弘徽殿の女御に、
「あの近江の君をお側にお仕えさせましょう。見苦しいような点は、年寄りの女房などに命じて、遠慮なく叱って教えていただいて面倒を見てくださいませんか。若い女房たちの噂の種にしてもの笑いにだけはしてくださらないように。何しろひどく軽率で困りもののようです」
と苦笑しながら言うのだった。
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