常夏 その二十四
弘徽殿の女御は、
「どうして、そんなに格別ひどい人でしょう。柏木の中将などが、それはまたとなく素晴らしい人だと思い込んで宣伝していたのに、実際はそれほどでもなかったというだけのことでしょう。父上が、こんなふうに、やかましくお騒がしくなるので、本人がきまり悪くなり、一つにはそれで恥ずかしくてためらっているのではありませんか」
と、こちらが気のひけるような様子だった。この弘徽殿の女御の容姿は、すべてがこまやかな趣のある美しさではなく、とても気高く澄明な感じだが、やさしい情味も加わって、味わいのある梅の花が開きそめた、明るい朝ぼらけのような感じだ。まだ言い残したことがたくさんあるように、微笑んでいる様子は、他の女たちとは違ってとりわけ美しいと、内大臣は見ているのだった。
「柏木の中将は、まあ、何と言っても、まだ世間知らずで思慮が浅く、こんなことになったのも調査の不十分さによるもので」
など、言うにつけても、気の毒なのは、近江の姫君の評判だった。
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