常夏 その二十二

 雲居の雁に、



「理想通り入内させたいと願っていたあなたへの期待は、叶えられなくなったけれど、何とかして世間の物笑いにだけはならないようにしてあげたいと思い、人の身の上の様々なことを聞くにつけ、いつもあなたが案じられてならないのです。ちょっと試しに、さも親し気なことを親切らしく言い寄ってくるような男の願いなどには、ここしばらくは、決して耳を貸してはいけませんよ。私にも考えのあることだから」



 など、雲居の雁を心から愛しいと思いながら話す。


 雲居の雁は、昔はまだ心が幼くて、何につけても深い考えもなく、夕霧を気の毒な目にあわせたあの騒ぎのときにも、かえって恥ずかしいとも思わず、内大臣に平気な顔で会っていたことだと、今になって思い出すだけでも、恥ずかしさで胸がいっぱいになって、たまらなくなる。


 大宮からも、雲居の雁に終始会えないのが不安だと、恨めしがられて、いつも便りがあるが、内大臣がこんなふうに言うのに気がねして、雲居の雁は大宮に会い訪ねることもできないのだった。

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