常夏 その四

 夕霧も、その件については詳しく聞いているので、つい、にやりとするのだった。弁の少将と弟君の藤侍従の二人は、ひどくつらそうだ。光源氏は、夕霧に向かって、



「夕霧よ、お前もせめてそういう落ち葉でも拾ってきなさい。好きな人にふられたという人聞きの悪い評判を後世まで残すよりは、その人と同じ血筋の姉妹に心を慰めてもらうのは、何の不都合があるものか」



 と、からかうのだった。


 表向きはとても睦まじい関係なのに、こうした何か張り合うようなことで、光源氏と内大臣は、昔からやはり何かの間に隙があるのだろう。まして今は、夕霧に、雲居の雁の件で、ひどく恥をかかせて、つらい思いをさせているので、内大臣のそんな冷たい仕打ちを、胸におさめかねて、わざとこれを内大臣に聞かれて、いまいましがられるがよい、と思うのだった。

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