常夏

常夏 その一

 とても暑い夏のある日、光源氏は東の釣殿に出て涼んでいた。夕霧も供をしている。親しい殿上人もたくさん控えていて、桂川から献上した鮎や、近くの賀茂川で捕れた石伏とかいう小魚などを、光源氏の目の前で料理していた。


 いつものように、内大臣の子息たちが、夕霧を訪ねて、こちらに来ていた。光源氏は、



「退屈で眠たくなっていたところです。いいときに来てくれましたね」



 と言って、酒を振舞い、氷を入れた水を取り寄せて飲んだり、氷水を注ぎかけた水飯などを、めいめいで賑やかに食べていた。


 風はよく吹き通っているが、日が長くて雲一つなく照り渡った空が、ようよう西日になるころ、蝉の声などもひどく暑苦しく聞こえてくるので、光源氏は、



「涼しいはずの水の上の座敷でも、一向に役に立たない今日の暑さといったら。失礼は許してもらいますよ」



 と、物に寄り掛かって横になるのだった。

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