蛍 その二十二
「いったい物語には、誰それの身の上といって、ありのままに書くことはない。それでもいいことも悪いことも、この世に生きている人の有様の、見ても見飽きず、聞いても聞き捨てにできなくて、後世にも伝えさせたい事柄を、あれやこれや、自分の胸ひとつにおさめておけなくなり、書き残したのが物語の始まりなのです。作中の人物をよく言おうとするあまり、よいことばかりを選びだして書き、読者の要求に従って、めったに世間にありそうもない悪い話をたくさん書き集めたのは、みな善悪それぞれの方面に関したことも、この世間に実際にないことではないのですよ。
唐土の物語は、その書き方が我が国とは違っているし、また日本のものでも、昔と今では変わっているでしょう。書き方の深さ、浅さの差はあるだろうが、物語をまったくの作り話で嘘だと言い切ってしまうのも、物語の本質を間違えています」
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