蛍 その十四

 馬場御殿は、こちらの西の対の廊下から見通せるほどの近さだ。



「若い女房たちは、渡り廊下の戸をあけて見物なさい。左近衛府には、この頃、なかなか気の利いた男たちが多いのだよ。なまなかな殿上人には、ひけをとらないだろう」



 と言うので、若い女房たちは、今日の見物を心から楽しみにしている。


 玉鬘の西の対のほうからも、女童などが見物にやってきた。こちらでは廊下の戸口に御簾を青々とかけまわして、現代調のぼかし染めの几帳を立てつらね、女童や、下仕えの女たちが、その戸口にうろうろしていた。


 菖蒲襲の衵に、二藍の羅の汗衫を着ている女童は、西の対のものだろう。可愛らしく感じのよい女童ばかり四人いる。下仕えが楝の花のような薄紫色の、裾の濃いぼかし染の裳に、薄萌黄色の唐衣をつけているのは、今日の節句にちなんだ装いだった。

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