蛍 その十三

 五月の節句なので、今日は玉鬘のところには、言いようもなく趣向を凝らした薬玉などが、方々からたくさん贈られた。悲しい運命に沈み込んでいた長年の苦労の名残もない現在の暮らしに、心ものどかにゆったりすることも多くなったので、どのみち、光源氏との関係を断つなら、光源氏の名に少しの疵もつけないようにしたいものと、どうして考えないはずがあろうか。


 光源氏は、花散里の部屋に顔を出して、



「夕霧の中将が、今日の左近衛府の競射の試合のついでに、友人たちを連れてこちらへ来るようなことを言っていましたが、そのおつもりでいらしてください。まだ明るいうちにやってくるそうですよ。不思議なことに、ここではこっそり内輪にする催しも、あの兵部卿の宮たちが聞きつけておいでになるので、どうしても大げさなことになってしまうから、そんな支度をしておいてください」



 などと言うのだった。

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