蛍 その十五
こちらの花散里のほうの女童は、濃い紅の単襲に、撫子襲の汗衫などをおっとりと着ている。それでもお互い、それぞれ競争しあっている様子は見ものだ。
気の若い殿上人などは早速女房に目をつけては、気のあるようなそぶりを送っている。
午後二時頃に、馬場御殿に光源氏が出てくると、ほんとうに親王たちも集まってきた。
競技も宮中での競射とは様子が違って、中将や少将などが連れたって来て、風変わりな趣向を華やかに凝らして遊び暮れた。
女には、さっぱりわからない競技だったが、舎人たちさえ、華やかな装束を着飾って、必死の秘術を尽くして勝負しているのを見るのは、ほんとうにおもしろいことだった。
馬場は紫の上が住んでいる南の町までずっと通してつづいているので、あちらでも、こういう若い女房たちは見物したのだった。
打毬楽や楽蹲などの舞楽を演奏して、勝負のある度あがる乱声など、笛や太鼓で大騒ぎするのも、すっかり夜になると、闇の中に何も見えなくなってしまった。
舎人たちはそれぞれ勝敗に応じて褒美の品々をもらった。
すっかり夜も更けてから、人々は帰ったのだった。
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