　兵部卿の宮の容姿などの優雅さは、兄弟だからか光源氏によく似ていると、女房たちも褒めていた。昨夜、光源氏がまるで母親のように玉鬘の世話をやいていた様子を、本当の心も知らないままに女房たちは、何とやさしくもったいないと、みんなで話し合っている。

　玉鬘は、こうして表面はさすがに親らしく振舞っている光源氏の様子を見るにつけても、

「しょせんは不運な自分が招いた不幸なのだ。実の父内大臣に探し出されて、人並みに娘として扱われた上で、このように光源氏に愛されるのなら、どうしてそれほど不似合いということがあるだろうか。今のような普通でない境遇でいる立場こそ情けなく口惜しい。しまいには世間の噂の種にならないだろうか」

　と、寝ても覚めても思い悩んでいる。とは言っても、光源氏は、実のところ、父と娘の近親相姦のようなみっともない関係に、玉鬘を落とすような結果にはしたくないと、考えていた。ところがやはり例の多情な性質なので、秋好む中宮などに対しても、きれいさっぱり思いあきらめていないのだろうか。折にふれては、ただ事ではない怪しいことを言い、秋好む中宮の気を引くようなこともするのだった。けれども中宮という高貴な身分では、何とも重々しく近寄りにくく、万事面倒なので、あからさまに立ち入っては心の内を打ち明けたりはしない。ところがこちらの玉鬘は、人柄も親しみやすく現代風でいるので、光源氏はつい気持ちが抑えきれなくて、女房たちがもし見かけたのなら、きっと怪しむに違いないような振舞いなどを、時々するのだった。それでもありえないほど、よく自制するので、危ないながらも、まだやはり美しく清い二人の関係なのだった。