胡蝶 その十三

 頭中将の若君たちは、この夕霧に連れられて六条の院に来ては、何となく意味ありげに悩ましそうに徘徊するのだが、玉鬘は、色恋の気持ちからの切なさではなく、実の兄弟に言い寄られるのが内心ではつらくて、本当の父親の頭中将に、自分がこうしているのを早く知ってもらいたいと、人知れず願っていた。けれどもそんなふうには、ちらりとも光源氏には漏らさない。ただひたすら、光源氏になついて頼り切っている気遣いが、可愛らしくて初々しかった。それほど似ているようでもないのだが、やはり亡き母の夕顔の面影をとても偲ばせるものがあり、夕顔にはなかった才気が、玉鬘には備わっているのだった。

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