胡蝶 その十四

 四月一日の衣替えで、人々が夏の衣裳に目新しく改めたころは、空の空気さえ、妙に何かしら情趣がただよっていた。光源氏はたいして用もなく暇な時なので、いろいろな管弦の遊びを催し、時を過ごしていた。


 西の対の玉鬘のところに、人々から恋文がだんだん多くなっていくのを、やはり期待通りになったと光源氏は面白がり、何かにつけて玉鬘の部屋に来ては、それらの恋文を見て、相手にふさわしいと思われる人には、早く返事を書くようにとそそのかしたりするのだった。玉鬘はいつ入ってくるかわからない光源氏に気を許さず、困ったことだと悩んでいる。


 兵部卿の宮が、気持ちを打ち明けて間もないのに、焦れていらいらと恨みっぽい愚痴をあれこれ書いてきた手紙を見て、光源氏は会心の笑みを漏らすのだった。

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