初音 その十八

 末摘花は堅苦しく、それでもさすがに少し微笑み、



「醍醐寺の阿闍梨の兄君のお世話にかまけてしまいまして、自分のものを縫うまでは手が回りかねました。皮衣までその人にとられてしまってからは、寒うございます」



 と話になるその人とは、これも同じように鼻の赤い兄君なのだった。素直なのが可愛いとは言え、これではあまりにもあけすけすぎると思うが、さすがに末摘花が相手では、光源氏もすっかり生真面目で堅苦しい人物になっていた。

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