玉鬘 その七十

「さまざまの草子や歌枕の内容をよく勉強し、すっかり読みこなしていて、その中の言葉を取り出してみても、いつも読み慣れている詠みぶりは、そう大して変わるはずもないでしょう。この方の父君の常陸の宮が書き写されたという紙屋紙の草子を、私に読めと姫君が贈ってくださったことがあります。和歌の作り方の秘伝が、びっしりと書かれていて、歌の病の避けなければならない規則がたくさんあげられていたので、もともと歌のうまくない私には、それを見るとかえって、ますます窮屈になり、動きがとれなくなりそうだったので、面倒に思い、返してしまった。そんなものを読んで歌をよく勉強しておいでの方の詠みぶりにしては、どうもこの歌は平凡ですね」



 と言って、おかしがっている様子なのは、末摘花には気の毒なことだった。

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