玉鬘 その三十二
もう日が暮れるからと、豊後の介の一行が急いで灯明の用意などしてしまい、急き立てるものなので、こうして再会したため、かえって心あわただしく立ち別れてしまった。右近は、
「ご一緒にまいりましょうか」
と言ったが、互いに供のものたちが不審がるだろうし、乳母は豊後の介にも右近とのめぐりあいの事情はまだ話す暇もない。乳母も右近もお互い格別気がねなく、宿からみなそれぞれ外に出た。
右近はそっと気をつけて見ていると、乳母の一行の中に、いかにも美しい後ろ姿の、とても旅やつれた女君が目についた。初夏四月ごろに着る、単衣のようなものを頭から被き、その中に着こめている黒髪が透けて見えるのが、なんとももったいないように見事だった。右近は痛々しくも、いとおしく感じるのだった。
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