玉鬘 その二十五

「どのような罪障の深い身で、こうした悲しい世にさすらわねばならないのだろう。私の母君がすでにこの世から亡くなり、いらっしゃらなくても、私を不憫とお思いなら、今母君のいらっしゃるところにお連れください。もしまだ生きてこの世においでならば、どうかお顔をお見せくださいませ」



 と、仏に祈りながら、生前の夕顔の面影さえ覚えていないので、ただ夕顔が生きていたらということだけを、ひたすら悲しみ続けているのだった。


 こうして今さしあたって、馴れない旅路の辛い難儀も加わって、また改めてひどく悲しい思いをしながら、どうにかこうにか、椿市というところに、生きた心地もなく疲れきってたどり着いた。四日目の午前十時頃のことだった。


 これまでの道中、歩くどころではない有様で、あれこれ療治をしながら、ようやくここまで来たものの、玉鬘はもう足の裏が辛抱できないほど傷んで歩けず、辛がるので、仕方なく休むことにしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る