玉鬘 その二十六

 頼もしい豊後の介のほかに、弓矢をもったものが二人、そのほかには下男や童などが三、四人お供していた。女は、みんなで三人、壺装束の旅姿をして、ほかに、おまるの掃除などをするような女と、年寄りの下女二人ほどがお供していた。いたって少人数でひっそりと人目を避けた一行だった。


 観音様にさし上げる灯明も、ここで新たに手に入れているうちに、日も暮れてきた。宿の主人の法師が来て、



「ほかのお方をお泊めすることに決まっているのに、誰が割り込んで来られたのか。不届きな女どもが勝手な真似をして別の人々を泊めたりして」



 と小言を言うのを、何てひどい言い分だと呆れて聞いているうちに、たしかにそこへ人々がやってきた。


 この人々も歩いてきた様子だった。相当な身分の女二人に、下人たちは、男女大勢いるようだ。馬四、五頭をひかせて、一行はひどく地味にやつして、お忍びらしく目立たないようにしているが、こざっぱりした身なりの男の従者たちもいた。


 主人の奉仕は、是非にもこの一行をここに泊めたいと思って、部屋割りに頭を悩まして苦心しながら右往左往していた。それが気の毒だが、また部屋を替えるのもみっともないし、面倒なので、豊後の介の一行は奥の部屋に入ったり、他の部屋に目立たないように玉鬘を隠したりして、残りの者たちは部屋の片隅に身を寄せた。幕などをひき隔てて、新客から玉鬘を見られないようにしている。新しく来た連中も、気の置けるほどの客でもなさそうだった。とてもひっそりとして、お互いに気を遣っているのだった。

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