玉鬘 その二十四

 そこで玉鬘を岩清水八幡宮へ参詣に連れて行った。その辺りのことを知っている人を尋ねて、昔亡夫が懇意にしていた五師という僧侶が生き残っていたのを呼び寄せて、一緒にお詣りさせた。豊後の介は、



「この次には、仏のなかでは初瀬の観世音こそ、日本のうちではあらたかな霊験をお示しくださるそうで、その評判は唐土まで届いているといいます。まして玉鬘様はたとえ遠い辺鄙な田舎とはいえ、同じ日本の国内に長年お住まいだったのですから、玉鬘様にはいっそうご利益をお恵みくださることでしょう」



 と言って、初瀬のお詣りに出した。


 ご利益があるようにと、殊更乗り物を使わず徒歩で行くことにした。玉鬘は馴れないので、とても辛く苦しいけど、人の言うままに、無我夢中で歩くのだった。

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