玉鬘 その十七

 次男が大夫の監の味方に引き込まれたことが、乳母は恐ろしく心配で、長男の豊後の介を急きたてたので、



「いったいどういうふうにしてさし上げたらいいのだろうか。相談して力になってくれる人もいない。数少ない弟たちは自分が大夫の監に味方しないというので仲違いしてしまった。大夫の監ににらまれては、ちょっとした身動きさえままならないことだろう。下手に動いて上洛などすれば、かえってひどい目にあわされるに違いない」



 と、思案に暮れていた。玉鬘が人知れず嘆いている様子がとても気の毒で、大夫の監になるくらいなら、いっそ死んでしまいたいと沈み込んでいるのも、もっともなことと思うので、思い切った旅の計画を立てて京へ出発した。妹も長年連れ添った夫を捨てて、玉鬘のお供に旅立った。前はあてきと呼ばれていた妹で、今は兵部の君と言われているものが、玉鬘に従って、夜逃げ出して船に乗り込んだのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る