玉鬘 その十六
大夫の監は、
「待て待て、これは何とおっしゃる」
と、詰め寄ってくる気配に怯え、乳母は顔色も失ってしまった。娘たちは、さすがに気丈に笑って見せて、
「玉鬘様が普通の体ではないので、この縁談が壊れたら辛くお思いになるだろうという気持ちを、何分耄碌しておりますので、鏡の神を引き合いに出したりして詠みそこねたのでございましょう」
と説明した。
「おお、そうか、そうか」
と大夫の監はうなずいて、
「しゃれた詠みぶりでいらっしゃるな。拙者など、田舎者と言われておろうが、わけもわからぬ土民でもござらぬて。都の人と言うても何ほどのことがあろうぞ。何ごともよく心得ておりますわい。あまり馬鹿になさらぬがよかろう」
と言って、またもう一つ詠もうとしたが、うまく歌が出てこなかったのだろう。そのまま帰っていったのだった。
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