乙女 その七十一

 光源氏は、閑静な住まいを、どうせならうんと広く見た目にも立派に造り、別々に離れ住んでいるため、めったに逢えない山里の明石の君なども、集めて一緒に住ませようと計画した。


 六条京極のあたりの、梅壺の中宮の伝領した旧い屋敷の周辺の、四町ほどの土地を御用地として、新邸を造営した。


 式部卿の宮が、来年はもう五十歳になるので、父宮の五十の御賀のことを、紫の上が準備している。光源氏も、これは知らない顔もできないことだと思い、その御賀の支度も、同じことなら新築の邸でしたいと、造営を急がせた。


 年が新たになってからは、いよいよ御賀の支度のこと、当日の法会のあとの精進落としのこと、楽人や舞人の選定などを、光源氏はとても熱心に忙しく準備した。御賀の法要に供養する経や、仏像の飾りつけ、その日の装束や、参会者への引き出物などについては、紫の上が用意するのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る