乙女 その六十三
年の暮には、正月の晴れの装束の支度など、大宮は今年は夕霧一人分だけに、かかりきって用意した。幾組も新しい装束をとても立派に仕立てて見るにつけても、それがみな六位の装束なので、夕霧は憂鬱になってばかりで、
「元日などには、とても参内するつもりはありませんのに、どうしてこんなに急いで用意するのでしょう」
と言う。大宮は、
「どうして参内しないでよいことがありましょう。まるでよぼよぼの老人のような元気なのない口ぶりではありませんか」
と言う。夕霧は、
「年寄りではないのに、何をする気力もすっかりなくなってしまった感じです」
と独り言を言って、涙ぐんでいる。雲居の雁のことを思い悩んでいるのだろうと、とても心が痛んで、大宮も悲しそうに眉をひそめるのだった。
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