乙女 その六十一
夕霧はその後、藤典侍に手紙もやらなかった。それにもっと大切な雲居の雁のことが心にかかって、日が経つにつれて無性に恋しいその面影に、もう一度会うことはできないのかと悲しむほかに、心のゆとりもなかった。
大宮のもとにも、何となく気が重くて出かけない。雲居の雁の住んでいた部屋や、長い年月、一緒に遊びなれたところばかりを、しきりに思い出すことが多いので、大宮の邸までが悩みの種に思い、また東の院の学問所にこもりきりになった。
光源氏はこの東の院の西の対に住んでいる花散里に、夕霧の世話を頼んだ。
「大宮の寿命もそう長くないようですから、大宮が亡くなった後も、先々までお世話してやってください。そのためにも、今のような幼い時からずっと面倒を見慣れておいていただいたほうが」
と言うと、花散里は、いつも光源氏の言葉通りに従う性分なので、やさしく愛情を込めて世話をするのだった。
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