乙女 その四十三
こう思い立ったからには、止めたところで考え直す頭の中将の気性ではないので、大宮は本当に飽き足らず残念に思い、
「人の心ほど情けないものはありません。あの幼い二人でさえ何かにつけて私に隠し事をしていたのが憎らしいこと。それでもまあ、あの二人は子供のことで仕方がないとしても、頭の中将は思慮分別も深くわきまえていらっしゃるのに、私を恨んで雲居の雁をこうして引き取って連れ去られてしまわれるとは。あちらへ行ったところで、ここより安心ということもないでしょうに」
と泣きながら言う。
折も折、ちょうどそこに夕霧が見えた。もしかして、ほんのわずかの隙でもないものかと、このころは足しげく顔を出していたのだ。
生憎頭の中将の車があるので、気が咎め、ばつが悪くて、そっと人目につかないように自分の部屋に入っていったのだった。
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