乙女 その四十二
大宮はとても気落ちして、
「たった一人の娘だった葵の上が亡くなったあとは、とても淋しく心細かったのに、嬉しいことにこの雲居の雁をお預かりしたので、私の生涯の大切な宝物と思って、明け暮れにつけて、老いの身の辛さも慰めようと思っていたのです。それを心外なことにあなたが思いやりのないお心で、分け隔てなさるのが辛くてなりません」
と言う。頭の中将は恐縮して、
「私が心にずっと不満に思っておりますことを、率直にそのまま申し上げただけです。どうして母上にひどい分け隔てなどいたしましょう。入内しております女御が、帝との御仲も思わしくなくて、先頃、里に下がってまいりましたが、まことに所在なさそうにふさいでおられますので、おいたわしく思っています。音楽の遊び事でもなさって、気散じされるのがよかろうと思いまして。それで雲居の雁にお相手させようと、ほんの一時、引き取るのです。ここまで御教養くださいまして、立派に成人させていただいたご恩は、決してあだ疎かには思いません」
と言うのだった。
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