乙女 その三十九

 雲居の雁は自分の独り言を夕霧が聞いたのかと恥ずかしくて、わけもなく顔を夜具の中に引き入れて隠した。幼く見えてもさすがにもう恋の切なさを知らないようでもないのは、隅にも置けない。乳母たちなどが近くに寝ていて身じろぎするのさえ気になるので、二人とも互いに声を立てられなかった。




 さ夜中に友呼びわたるかりがねに

 うたて吹き添ふ荻の上風




 と夕霧は思い続けながら、母屋の側に戻ったのも、ため息ばかり洩れるのだった。もしや大宮が目を覚まし、聞きとがめはしないかと気兼ねして、転々と寝返りばかりうちなら寝るのだった。

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