乙女 その四十

 翌朝、夕霧はわけもなく恥ずかしくて、早くから自分の部屋に入って、雲居の雁に手紙を書くが、それをことづける小侍従にも逢えないし、雲居の雁の部屋のほうにも行けないので、胸のつぶれるような悲しさに沈んでいた。


 雲居の雁もまた、二人の仲を人に騒がれたことだけが恥ずかしくて、これから自分の身がどうなるか、人がどう思うだろうか、などとは深くも気にしなかった。ただ美しく可愛らしい様子で、女房たちが夕霧のことをいろいろ批評して話し合っているのを見聞きしても、夕霧を嫌な人と疎んじる気にもなれなかった。それにしても、これほど大騒ぎになるとは思ってもいなかったのに、世話役の乳母たちが、雲居の雁に小言を言うので、こちらからも手紙をやれなかった。もう少し大人びた人ならひそかに逢う機会も作るでしょうが。


 夕霧のほうもまだいくらか頼りない年頃なので、こんなことになったのがただもう口惜しく、残念にばかり思っていたのだった。

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