前のエピソード――乙女　その二十八

　頭の中将は帰りの道々、

「二人の縁組は、まったくお話にならないほどでもないけれど、いかにもありふれたつまらない関係だと、世間で噂することだろう。光源氏が、無理にも弘徽殿の女御を押さえ込んでしまわれるのも口惜しいので、もしかしたら雲居の雁を入内させたら、人にまさる幸運も得られようかと期待していたのに、残念なことになってしまった」

　と考えた。

　光源氏との仲は、一通りは昔も今もしっくりしているものの、こうした競争になると、先に立后争いで張り合ったしこりも、あれこれ思い出されて、面白くない気分になり、寝覚めがちに夜を明かした。

「大宮もそんなふたりの親しいそぶりは気づかれていただろうに、目に入れても痛くないほど可愛がっていらっしゃる孫たちなので、気ままにさせておいでなのだろう」

　と考えると、さっき女房たちが話していた口ぶりが心外で、いまいましく腹が立った。すると興奮して、もともと男らしく、きっぱりと物事のけじめをつける性分なので、怒りを静められないのだった。