乙女 その十七
さて、宮中ではそろそろ后を決める時期になった。
「前斎宮の女御こそ、亡き藤壺の宮も、帝のお世話役にと私にお頼みになられたお方だから」
と、光源氏はそれを理由にあげて推薦した。そうなれば、皇族から引き続いて后が立つことになるので、世間は承知しない。
「弘徽殿の女御が、まず誰よりも早く入内なさったのをさしおいて、どうして」
などと、あちらやこちらに味方している人々は、それぞれひそかに気を揉んで心配していた。
紫の上の父で、兵部卿の宮という人も、今は式部卿の宮になり、今の帝から、伯父としてこれまでにも増して厚く信任されていた。その人の姫君が、かねての希望通り入内した。前斎宮と同じように王族の女御として伺候している。
「同じ王族なら、母方の血筋で帝とは従兄妹同士でいることだし、このお方こそ亡き母后の代わりのお世話役にふさわしいだろう」
とそれぞれ主張し競争した。けれどもやはり梅壺に住んでいる前斎宮の女御が中宮に立ったのだった。
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