乙女 その四

 朝顔の姫宮は嫌な気持ちになり、



「亡き父宮にも、私はこんなふうな強情ものと思われて通してきましたのに、今更また世間並みの常識に従うのも、何かまったくそぐわないような気がします」



 と言って、取り付く島もないような様子なので、女五の宮も、それ以上は無理に勧めることも出来なかった。


 宮家に仕える人々も、身分の上下に関わらずみな、光源氏に味方しているので、朝顔の姫宮はいつ女房たちがひょっとして手引きしないかと、不安でならなかった。


 光源氏本人は、誠意の限りを尽くして、深い真実の愛情を見せて、朝顔の姫宮の気持ちが和らいでくれるときを、切に待ち続けている。朝顔の姫宮が心配するように、無理強いにその心を踏みにじろうなどとは、夢にも考えてはいないようだった。

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