乙女 その三

 女五の宮が、朝顔の姫宮に会うときは、



「光源氏が、こんなに丁寧に何かとお手紙をくださるようですが、いえねえ、こうした執心は何も今に始まったことではないのです。亡き父宮も、あのお方が他家と縁組なさったので、自分の婿としてお世話できなかったことにがっかりなさり、『私がせっかくそのつもりだったのに、姫宮本人がとても強情で取り合わなかったのだ』などと、度々おっしゃって、残念がっていらっしゃったときもありました。それでも、亡き太政大臣の姫宮の葵の上が、存命でいられた間は、母君の大宮の思惑がお気の毒ですから、私もあれこれ口添えすることも控えていました。でも今はもう、身分も高く重々しい正妻だったお方もお亡くなりになったのですから、父宮のお望み通りに、あなたが光源氏の正妻になられても、何の不都合があろうかと、ふと思われるのです。それにつけても光源氏が昔と同じような気持ちになられて、こんなに熱心に求婚なさるのも、そうなる前世からの因縁がおありなのかと思われますよ」



 と、いかにも古風な調子で勧めるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る