朝顔 その十四
ある夕暮れのこと、今年は諒闇のため、宮中の神事もなくして物寂しく、光源氏は所在無さを持て余し、例によって女五の宮のところを訪ねた。
雪がちらついている何となくなまめいた黄昏時に、着馴染んでほどよくしなやかになった着物に、いつもにもまして香を薫きしめられて、一日がかりで格別念入りに身だしなみをした。その美しさは、気の弱い女ならどうしてなびかずにはいられようかと思うほどだった。
それでもさすがに、紫の上には出かけの挨拶はした。
「女五の宮のお加減が悪いそうですから、お見舞いに伺います」
と、ちょっと膝をついて言うのに、紫の上は目を向けようとしない。姫君をあやして気づかぬふりをしているその横顔が、いつもと違っているので、
「妙にこのころは機嫌が悪いですね。私は悪いことなど全然していませんよ。あまり見慣れて見映えもせずあなたに飽かれはしないかと、わざと絶え間をおいているのですよ。それをまた、どんなふうに邪推していることやら」
などと言うのだった。
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