朝顔 その七

「これからは、どんな神のお戒めを口実に、私を拒もうとなさるのでしょう。私もああした世の中が何もかもいやになるような事件もありまして以来は、本当に様々な辛い思いを味わいつくしてきました。その片端なりとどうかお聞きいただきたくて」



 と強いて言う態度なども、昔より今少し、しっとりとした優美さまで加わっていた。それも、今では実際年齢も相当なはずなのに、内大臣という高い身分にはふさわしくないほどの、若々しさでいるからのようだった。




 なべて世のあはればかりをとふからに

 誓ひしことと神やいさめむ




 と返事があったので、光源氏は、



「何とまた情けない。あのころの罪などは、風にまかせてすっかり祓ってしまいましたのに」



 と言う様子もまた、この上なく愛嬌がこぼれるばかりだった。

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