朝顔 その六
濡れ縁では畏れ多いので、南の廂の間に光源氏を入れた。女房の宣旨が見て、取り次いだ。
「今更御簾ごしとは若いものにするようなよそよそしい扱いですね。昔からの長い年月、ずいぶん心のたけを尽くしてつづけてきました。その苦労をお認めくだされば、今はもうお部屋への出入りもお許しくださるものと、あてにしておりましたのに」
と言って、物足りない様子だった。
「父の在世中のことはみな夢のこととしまして、その夢からさめた今は、かえってはかない心持がするのでしょうか。何ごともしっかり思い決めかねていますので、今おっしゃった心尽くしの苦労のことなどは、あとからゆっくりと考えさせていただきましょう」
と、宣旨を通して答えた。たしかに世の中ははかなく無常なものだと、光源氏は何気ない朝顔の姫宮の言葉につけても、思い続けずにはいられない。
人知れず神のゆるしを待ちし間に
ここらつれなき世を過ぐすかな
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