薄雲 その三
明石の君は、
「私のような人数でもないしがないものは、とても肩を並べられる立場でもないのに、のこのこ顔出しなどしたら、あちらではさぞ無礼なものと、不愉快に思われることだろう。私などはどうなったところで同じこと、生い先の短い姫君の身の上も、所詮は紫の上の心次第で決まることになるだろう。どうせどうなら、こんなふうにまだ物心ついていないうちに、おゆずりわたしてしまったほうがいいかもしれない」
と思った。
「でも、手放してしまったら、あとあとどんなに気にかかることだろう。姫君を奪われ淋しい所在無さを慰めるすべもなくなってしまっては、どうやってこれから過ごしていったらいいだろう。その上、姫君がいなくなったら、光源氏様だって何に惹かれてたまさかにでも、ここへ立ち寄りくださるだろうか」
などと、あれこれ思い悩むにつけても、明石の君は限りなくわが身の不幸を嘆くのだった。
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