松風 その二十三
めぐりきて手に取るばかりさやけきや
淡路の島のあはと見し月
と光源氏が詠む。ある人は、
浮雲にしばしまがひし月影の
すみはつるよぞのどけかるべき
と、光源氏を讃えた。
左大弁は、少し年輩の人で、亡き桐壺院の御代にも信任を得て親しく仕えた人だったので、
雲の上のすみかを捨てて夜半の月
いづれの谷に影かくしけむ
と亡き桐壺院を偲んだ。
人それぞれに歌はたくさん詠んだようだったが、わずらわしいのであとは省こう。
親しい内輪の人相手のしんみりした話が、少しくだけてきて面白くなり、人々は千年も側で聞いていたいような、光源氏の姿なのだった。いつか紫の上が言った、
「斧の柄も朽ちてしまうくらい」
いつまでもここにとどまっていたいのだが、今日はもう逗留するわけにはいかないので、急いで帰るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます