松風 その二十一
それぞれ漢詩の絶句などを作って遊び、夕月が華やかに差し出るころになると、管弦の遊びが始まって、とても華やかだった。弦楽器は、琵琶、和琴ぐらいで、笛など上手なものばかり選りすぐり、秋の季節にふさわしい平調の調子で吹きたてた。折から川風も合奏するように吹いて興趣がつのるのだった。
月は空高く差し上り、あらゆる風物が月光を受け澄み渡って見え、夜もやや更けてきたころ、殿上人が四、五人ばかり連れ立ってきた。
その人たちは今まで宮中の帝の側で、管弦の遊びに参加していた。そのとき、帝は、
「今日は六日間の物忌みのあける日だから、きっと光源氏が参内するはずなのに、どうしたのだろう」
と言ったが、桂の院に逗留していると聞いて、光源氏の消息を知ったのだった。その使いは蔵人の弁だった。
月のすむ川のをちなる里なれば
桂の影はのどけかるらむ
「羨ましいことです」
とあった。光源氏はつつしんで不参の侘びを言った。禁中の管弦の遊びよりは、やはり場所柄のせいかぞっとするほど素晴らしさがひときわ加わった音色に感動して、また酔いが深くなった。
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