松風 その二十
光源氏が非常に重々しく悠然と車のほうに歩く前を、前駆のものたちは、大声で先払いしている。自分の車の後ろの席に、兵衛の督などを乗せている。
「何とも手軽な隠れ家を見つけだされてしまい、残念なことだ」
と光源氏はひどく辛がった。
「昨夜はいい月だったが、残念なことにお供に遅れてしまったので、今朝は朝霧を分けて早々とお伺いしたのです。山の紅葉はまだ早すぎましたが、野辺の秋草の花は今が盛りでした。某の朝臣は小鷹狩りに出かけていて、遅れてしまいましたが、どうなりましたか」
などと兵衛の督たちは言う。
「今日はやはり桂の院に行こう」
と言って、そちらのほうへ出かけていった。
桂の院では急な饗宴の支度に大騒ぎになった。鵜飼たちを呼ぶと、明石の浦の海人たちの騒がしいお喋りが自然に思い出された。
昨夜は鷹狩りで嵯峨野で一夜を明かした公達たちが、獲物の小鳥をほんのしるしばかり結び付けた萩の枝などを、お土産として持ってきた。
盃が幾度も次々と回されて、川辺は足元が危ないので、酔いに乗じて終日桂の院で過ごした。
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