松風 その十三
翌日は、修繕しなければならない場所のそれぞれの担当を、新しく任命した家司などに、命じた。
光源氏が桂の院に来るということだったので、近くの荘園の人々が、桂の院に集まったが、やがてその人たちは皆、大堰の邸に集まってきた。
前庭などの折れ倒れた植え込みなどの手入れを、その荘園の人たちにさせた。
「そこそこにあった立石なども皆、どこかへ転がって行ってしまったのに、風情のあるよう造り直したら、結構風流な庭になりそうだな。しかし、こんなところにわざわざ念入りに手を加えるのも甲斐のないことだ。どうせいつまでも住めるところではないので、いつか立ち去るだろうが、そのときになって執着が残るのも辛いものだ。私には経験がある」
などと、昔の明石からの出発の辛かったことなどの話を始め、泣いたり笑ったりなどしながら、打ち解けて話す様子は、本当に素晴らしいのだった。
尼君がその様子をそっと覗いてみると、自分の老いも忘れ、心の憂さも晴れるような気持ちがして、つい微笑んでしまう。
東の渡り廊下の下から流れ出ている遣水の風情を、手入れさせようとして、直衣もつけないくらいくつろいだ袿姿でいるのがしっとりと美しいのを、尼君は本当に結構な人だと、心の底から思うのだった。
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