絵合 その九
光源氏がこうして絵をたくさん集めていると聞いて、頭の中将は張り合って一層熱心になり、軸、表紙、紐の飾りにもますます意匠を凝らして立派に作った。
それは三月の十日頃なので、空もうららかに、人の気持ちものどかで、全てに風情のある時節だった上、宮中あたりでも、節会の行事などもない暇なときなので、どの妃たちもただ絵を愉しむようなことをして、日を暮らしていた。光源氏は同じことなら、帝がもっと楽しく見れるようにしてさし上げたいと考えた。
それからはいっそう気を入れて集めた。前斎宮にも、弘徽殿の女御にも、様々な絵が集まった。
物語絵は精密にわかりやすく描いてある点が、親しみを感じさせてまさっているようだが、前斎宮は昔の物語の名高く由緒ある絵を、ほとんど集めた。一方、弘徽殿の女御は、その頃の新作の物語で、面白いと評判の高いものばかり選んで描かせたので、ちょっと見た感じの斬新さ、派手さではこちらがはるかにまさっていた。
帝付きの女房なども、絵の嗜みのある者は皆、これはどう、あちらはこうなどと評定しあうのを、この頃の仕事にしていた。
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