蓬生 その十六
十一月になると、雪や霰がよく降って、それでもよそでは消える間があるのに、常陸の宮の邸では、朝夕の日差しを蓬や葎がさえぎってしまうので、陽の差さないその草陰に深く積もっている。雪の消えることのないと言われる越前の白山が思いやられるような雪景色になった。
出入りする下人でさえいなくなった庭を眺めて、末摘花はしょんぼり物思いに沈み込んでいた。たわいもないお喋りをして慰めては、泣いたり笑ったりして気を紛らわせてくれた侍従までが、今はいなくなってしまい、末摘花は夜も、埃の積もる帳台の中で、ひとり寝の淋しさに、もの悲しい思いをしていた。
二条の院のほうでは、久々で再会した光源氏が珍しくて歓迎に大騒ぎしている有様なので、光源氏は自由な出歩きは難しく、それほど大切に思っていない人々には、わざわざ訪ねもしない。まして、あの常陸の宮の末摘花は、まだ無事でこの世にいるだろうか、と思い出す折もたまにあるのだが、急いでお見舞いに行こうという気持ちも起こらないまま、日が過ぎていき、その年も暮れてしまった。
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