花宴 その九

 光源氏は衣装などを念入りに整えて、すっかり日が暮れてしまった頃に、右大臣が待ちかねているところへ到着した。


 唐織物の直衣に、葡萄染めの下重ねの裾を長くひいて、他の人々は皆、束帯の正装のところへ、しゃれた皇子らしい装いの姿も優雅に、人々にあがめかしずかれて宴席にいた様子は、実に水際だっている。


 その美しさには花の色香さえおされて、かえって興ざめに見えたほどだった。


 管弦の遊びなどに面白く時を過ごして、夜が次第に更けていく頃、光源氏はひどく酔いすぎて、苦しそうなふりをしてそれとなく席を立った。

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